小説 秒速5センチメートル【初恋の美しさと切なさを描く珠玉の物語】

BOOK

小説 秒速5センチメートル (角川文庫)

著者: 新海 誠

出版社: KADOKAWA/メディアファクトリー

第1話 桜花抄(おうかしょう)

主人公の篠原明里(あかり)と遠野貴樹(たかき)は、小学3年生の時に出会い、中学に進学するまで深い絆で結ばれていました。しかし、アカリの引っ越しにより二人は離ればなれに。中学生になってからは文通を続け、再会を約束しますが、約束の日は大雪で電車が遅れ、終電を逃す事態に。二人は再会の喜びとともに、短い時間を共に過ごしますが、アカリはこの奇跡のような瞬間が二人にとって完璧なものだと感じ、これが最後の再会となるかもしれないと寂しく思います。

第2話 コスモナウト

物語は中学2年から高校3年にかけての遠野貴樹を中心に展開します。タカキは新しい転校先で澄田花苗(かなえ)と出会い、彼女からの片思いを受けますが、彼の心は依然としてアカリへの想いに囚われていました。花苗が告白しようとする瞬間、タカキは彼女の気持ちを察して拒絶の態度をとります。その後、ロケットの打ち上げを見たタカキは、自身も新たな地へ進む必要があると感じます。

第3話 秒速5センチメートル

篠原明里と遠野貴樹は、21歳から26歳の間にそれぞれ異なる人生を歩んでいきます。アカリは大学で一度は恋人ができるものの長続きせず、やがて別の人と結婚します。一方、タカキは仕事関連で出会った女性と浅い関係を繰り返し、結局破局を迎えます。二人はある日、踏切で偶然すれ違いますが、遮断機が下りてしまい、お互いの存在に気づくことなく通り過ぎてしまいます。アカリは新婚の幸せに浸りながらも、タカキは自分も前に進むべきだと感じます。

所感

この作品の大まかなストーリーは、読者に強烈な印象を与えます。小学生時代の恋愛を引きずっているかのように見える「貴樹」ですが、実際には「明里」の存在によってより良く生きられたのではないでしょうか。宗教の世界では、神の存在を信じる者ほど、また死後に天国と地獄が存在すると信じる者ほど、道徳的な行いが増えるというデータがあります。同じように、誰かの存在を意識することで、常日頃から他者を思いやり、感謝の念を抱きながら、道徳的な行動を取るようになるのではないでしょうか。

長年離れることになったとしても、お互いを思いやり、胸を張って生きるように振る舞うことはとても素晴らしいことです。誰かを好きでいることはとても素晴らしいことで、その甘さと人間の美しさをこの小説は教えてくれます。素晴らしい小説でした。映画版も視聴したいと思います。


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