著者:ダニエル・E・リーバーマン, Daniel E. Lieberman
出版社:早川書房
運動のメリットに疑問を投げかける本
「脳鍛えるには運動しかない」や「運動脳」で運動のメリットが叫ばれている。運動により集中力や創造性が増し、平均寿命も延長されると言う。
ただその一方で、多くの人が運動を面倒くさがり、途中でジム通いを止めてしまう。運動が身体に良いものであるなら、なぜ人間はこれほどまでに本能的に運動を嫌がるのであろうか。
その根本的な原因を探るのが本書。
主な内容
① 怠惰
人間を含め、すべての生物は限られた食料を分け合いながら生存し、繁殖してきた。エネルギーを無駄にしないために基本的には動かず、エネルギーを節約するように本能がプログラムされている。
しかし、狩猟採集社会では運動が不可欠だったため、狩猟や採集に適した運動スタイルを心地よく感じるように進化してきた。
人間の場合、一定時間走り続けると心地よくなり、長期間走れるように脳がプログラムされている。
② パワーと持久力
生物にはそれぞれ適した運動スタイルがある。例えば、チーターは最高速度を重視し、短期間で獲物を捉える肉食動物だが、長距離を走ることは困難である。
一方、人間のような雑食動物や草食動物は、肉食動物から逃げることを重視し、長距離を移動できるように進化してきた。遅筋を発達させ、中程度の速度で長距離を走ることができるようになっている。
③ 狩猟採集と運動
狩猟採集社会において、運動は生存のために不可欠なものであった。狩猟には短期間の高強度の運動が、採集には長時間の低強度の運動が必要だった。
これにより、人間はさまざまな運動スタイルに適応することができた。
④ 進化と運動
人間は進化の過程で運動能力を高めてきたが、その過程でエネルギーを効率的に使うための仕組みも発達させてきた。これにより、エネルギーを節約しながら長距離を移動する能力を持つようになった。
⑤ 持久力
人間は狩猟採集を通じて長距離を移動するように進化してきた。また、現在においても交通インフラが発展していない地域では1日約10キロ弱の長距離を重量物を運びながら移動する。
機械道具の存在しなかった時代から、人間は自然とそうした運動を行うように進化してきた。
⑥ 運動すべきか
運動していても不健康で早死にする人はいるし、その逆もある。人間の健康度は運動以外にも人間関係や趣味、社会的地位なども影響する。
しかし統計的には運動量が少なければ少ないほど死亡率が高く、運動量が増えるほど死亡率が低下する傾向が見られる。
⑦ 現代の運動と健康
現代社会におけるジムやトレッドミルでの運動は、人類が進化してきた運動スタイルとは異なるため、苦痛を感じたり、体を故障することがあるのではないか。
人間が本来どのように生きてきたかを意識し、本能的な仕組みを活用して運動を楽しむことが重要である。
⑧ 運動の多様性
運動には多様な形態があり、個々の体質やライフスタイルに合わせた運動方法が求められる。ランニングやウォーキング、ストレッチングなど、自分に合った運動を見つけることが健康維持の鍵となる。
所感とまとめ
本書を通じて、運動が人間の進化とどのように関係してきたかを深く理解することができました。運動の本質とそれが人類に与える影響について考えることで、
私たちの生活における運動の重要性を再認識しました。運動不足が健康に悪影響を与える一方で、過度な運動もまた健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、
適度な運動を心がけることが大切です。
現代社会では、ジムやトレッドミルでの運動は必ずしも自然な形で行われるわけではありません。そのため、運動を続けるためには楽しみながら行う工夫が必要です。
自分自身の体と向き合い、運動のメリットを最大限に活用して、より健康的な生活を送りたいと思います。本書を通じて、運動の本質とその価値を再認識し、
日常生活に取り入れるヒントを得ることができました。これからも運動を楽しみながら健康を維持し、長く続けるための方法を模索していきたいと思います。