完全無欠の問題解決―――不確実性を乗り越える7ステップアプローチ
著者:チャールズ・コン, ロバート・マクリーン
出版社:ダイヤモンド社
チャールズ・コンとロバート・マクリーンによる『完全無欠の問題解決―――不確実性を乗り越える7ステップアプローチ』は、あらゆる課題に立ち向かうための実践的なガイドとして、多くのビジネスパーソンに役立つ内容です。この本の魅力は、そのシンプルさと汎用性。どんな人でも使える問題解決手法を具体的な例とともに紹介し、ステップごとに詳細に説明しています。
本書では、①問題の定義、②問題の分解、③対処法の選択といったアプローチを取り入れて、複雑な問題にも対処できるフレームワークを構築しています。それでは、各ステップを掘り下げて解説し、最終的に私たちが学ぶべきことをまとめていきます。
① 問題の定義
問題解決において最も重要なステップは、まず「正確に問題を定義すること」です。この段階で間違った定義をしてしまうと、その後の解決策が効果を持たないばかりか、誤った方向に進んでしまう恐れがあります。たとえば、本書で取り上げられている「パシフィックサーモンの生息数把握の難しさ」の例が印象的です。パシフィックサーモンの数を計測するのは容易ではなく、その正確なデータがないまま対策を講じれば、全く意味のない結果を招いてしまいます。
また、ネズミ駆除の例では、業者の「駆除数」を問題の定義にしてしまった結果、逆に業者がネズミを繁殖させてしまい、本来の目的である「被害の軽減」が果たせなくなりました。こういったケースからも、問題の定義がいかに重要であるかが理解できます。
② 問題の分解
一旦問題を正しく定義できたとしても、その問題は多くの場合、非常に大きく複雑なものです。そこで次に行うべきは「問題の分解」です。問題を細かく分割し、扱いやすいサイズにすることで、部分的な解決策を一歩ずつ積み重ねることが可能になります。
たとえば、空港の新滑走路の建設検討を考えた際、最初に行うべきは現状のキャパシティを細かく分析することです。滑走路の発着回数や、ターミナルの収容能力、さらには深夜の運航制限など、考慮すべき要素を細かく分けてそれぞれの制約条件を見極めます。その結果、オペレーションの効率化が可能な場合もあれば、新たな滑走路がどうしても必要になる場合もあります。このように、問題を分解しながら最適な解決策を見つけることが求められます。
③ 対処法の選択
問題の分解が終わった後に重要なのは「どのように対処するか」を選ぶことです。成功する確率が100%の解決策はほとんど存在しませんが、リスクを最小限に抑える方法や対策を講じることで、不確実性を乗り越えていくことが可能です。
本書では、リスクをヘッジするための具体的な手段として「情報の収集」「低コストの戦略選択」「リスクのアウトソーシング(保険の活用)」が紹介されています。特に、不安要素に対して過剰にリソースを割かないように、これらの手段を活用して脳のリソースを有効に使うことが求められます。問題解決において重要なのは、リスクを過度に恐れず、実行可能な戦略をスピーディーに選択することです。
所感:解決策の進化
本書を読んで特に印象的だったのは、「問題解決は静的なものではなく、進化し続けるプロセスである」という点です。現代では、AIやデータ分析などの技術を駆使することで、従来の手法よりもはるかに高精度な解決策が導き出せるようになっています。問題解決手法も、時代とともに進化し続けています。過去の成功体験に固執することなく、新しい技術や手法を積極的に取り入れる姿勢が求められています。
また、私たちの日常においても、問題解決は常に必要なスキルです。小さな問題から大きな課題まで、これらのアプローチを取り入れることで、より効率的で効果的な解決が期待できるでしょう。特に、問題を細分化して取り組むことは、日々の業務や生活でも非常に役立ちます。
まとめ:問題解決の鍵は「構造化されたアプローチ」
『完全無欠の問題解決』は、問題解決を誰でも実行できる汎用的な手法として7ステップに分解し、その実践方法を丁寧に解説しています。問題解決において最も重要なのは「問題を正確に定義すること」「分解して対処すること」、そして「リスクを過度に恐れずに実行すること」です。
この7ステップアプローチは、ビジネスの現場に限らず、私たちの日常生活にも応用できる手法であり、複雑な課題にも対処可能なフレームワークとして機能します。また、AIやデータ分析といった新しいテクノロジーを積極的に活用することで、より精度の高い問題解決が期待できる時代に突入しています。
最後に、私たちは限られた認知能力を補完し、より賢く問題に取り組むために、こうした手法を活用するべきだと感じました。問題に対処する際の考え方を一度リセットし、本書で紹介されているような科学的かつ論理的なアプローチを取り入れることで、未来をより良くするための一歩を踏み出せるのではないでしょうか。
コメント