著者:安藤広大
出版社:ダイヤモンド社
徹底した仕組み化の重要性
システム化は現代の組織運営において非常に重要です。合理的であるはずの人間は、実際の場面では感情やストレスに左右され、しばしば非合理的な行動を取ります。そこで、組織の上に立つ者は明確なルールや仕組みを提供することで、チームが感情に流されることなく、目標に向かって進めるようにする必要があります。本書の主なポイントは次の3つです。
1. 明確なシステムの提供
人間は自由を求めますが、完全な自由はかえって混乱を招くことが多いです。特に職場においては、あいまいな指示や不明確な権限は、成果を低下させる原因になります。上司は部下に適切な権限を与え、業務の進行を妨げないようにしつつ、明確なルールを設定することが重要です。会社の存続理由や成長目標があり、その下に各部門、各人の業務が位置づけられます。部下が自分の役割と責任を正確に理解することで、迷いなく業務を遂行できるのです。会社の方針や価値観を日常的に共有し、社員一人ひとりに浸透させることで、組織全体が同じ方向に進むことが可能になります。
2. 適度な危機感とストレスの提供
ストレスは適度であればパフォーマンス向上に寄与します。過度のストレスは健康や業務に悪影響を与えますが、全くストレスがない状態も同様に生産性を低下させます。人間は基本的にエネルギーを節約しようとする生物であり、危機感がなければ無意識にサボってしまう傾向があります。そこで上司は、部下に適切な目標を与え、危機感を持たせることが重要です。達成しなければポジションが変動するようなインセンティブを設けることで、自然と努力が活性化されます。
3. 前進感を感じさせることの重要性
人間は前進感を感じることでモチベーションが向上します。たとえば、過酷な環境であっても、目標や生きる理由がある人はその苦境を乗り越えることができるとされています。上司は部下に明確な目標を与え、その進捗を測り、目標達成までの道のりを可視化することで、モチベーションを保つ手助けを行います。明確な目標とそれを達成するためのシステム化が進んでいれば、部下のストレスは減少し、より効率的な業務進行が期待できます。
所感
本書は、リーダーやマネージャーにとって非常に有用なガイドラインを提供しています。特に印象に残ったのは、自由と規律のバランスについての記述です。仕事においては自由度が高ければ高いほど良いという考え方がありますが、完全な自由が逆効果を生むという指摘は非常に現実的です。人は自由すぎると迷い、結果として生産性が低下してしまうことが多々あります。そのため、上司は適切なルールと目標を設定し、組織全体が同じ方向に進むように導く役割が必要です。
また、適度なストレスが必要という点も納得できる内容です。全くストレスがない状態では人は怠けがちになり、仕事の質が落ちます。しかし、過度のストレスが逆効果を生むこともあり、その適度なバランスを取るのが上司の重要な役割であると再認識しました。実際、チームのモチベーションを高めるためには、目標達成の喜びを共有することが不可欠です。
まとめ
本書は、組織運営においてシステム化とルールの明確化がいかに重要であるかを強調しています。人間の非合理性に対応するためには、上司が適切なルールを設定し、社員に対して明確な指示を与える必要があります。ストレスと成果のバランスを見極めながら、前進感を感じさせる仕組みを作ることで、社員一人ひとりが自信を持って業務を進められる環境を整えることが可能です。今後のリーダーとしての役割をより深く理解するためにも、本書は非常に有益な知識を提供してくれる一冊です。
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