真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960【戦後日本の左翼勢力とその思想】

BOOK

著者:池上 彰, 佐藤 優
出版社:講談社

はじめに

『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』は、戦後日本における左派勢力の形成とその歴史的背景について深く掘り下げた一冊です。池上彰氏と佐藤優氏は、戦後の政治、社会の混乱期における左派勢力の台頭とその内部分裂、さらには左翼思想の変遷を詳細に解説しています。この本は、日本左翼運動がどのように形作られ、どのような影響を与えてきたのかを理解するために必須の書となっています。

戦後の左派勢力の形成と支持

戦後日本における左派勢力の台頭

戦後の日本では、貧困格差に対する不満が左派勢力の支持を集める要因となり、共産党社会党が急速に勢力を拡大しました。特に戦後復興の過程で、労働者階級の権利拡大を目指す左派の政治的アプローチは、多くの人々に希望を与えることとなりました。社会党はその勢力を強め、総理大臣を輩出するなど、政治の中心に躍り出ました。一方で、共産党はソビエト連邦の影響を強く受け、革命的な路線を掲げており、戦後日本の政治情勢において重要な役割を果たしました。

この時期の日本社会は、戦争の影響を色濃く残しており、再建を果たす過程で社会主義的なアプローチに対する支持が集まったのです。

共産党と社会党の対立と分裂

共産党と社会党の路線対立

共産党は革命的な政党であり、暴力革命を排さない立場を取っていました。それに対し、社会党は平和的な改革を志向し、社会的な変革を実現するためには、戦争責任を問い直し、平和的な社会を築くことを目指していました。これらの違いが、両党の間で深刻な対立を引き起こし、左派内部での分裂が繰り返されました。特に社会党内でも、左右に分かれることが多く、その統一を試みても分裂が続いたのです。

スターリン批判と日本の共産党への影響

1956年、フルシチョフによるスターリン批判が世界中の共産主義者に衝撃を与え、日本の左翼勢力にも大きな影響を与えました。スターリン批判は、共産党内での路線対立を引き起こし、分裂の原因となっただけでなく、ソ連のハンガリー動乱への対応に対する賛否も大きな亀裂を生じさせました。この事件は、戦後日本の左派勢力にとって重大な転換点となったのです。

新左翼の誕生と左派勢力の変遷

安保闘争と新左翼の登場

1960年の安保闘争を契機に、従来の共産党や社会党に不満を抱いた若者たちが新左翼として登場しました。新左翼は、共産党や社会党の平和的な路線に対して批判的な立場を取り、より過激な思想や行動を取るようになりました。内ゲバ(暴力的対立)などの激しい衝突を展開し、従来の手法を拒絶し、独自の路線で行動を起こしました。

左派勢力の衰退と再評価

ソ連崩壊後、左派勢力は衰退し、特に社会党は解党の危機に瀕しました。しかし、近年では、格差の拡大貧困問題が再び社会問題として注目される中で、左派が過去に議論してきた問題が再評価される可能性があります。現代社会において、左翼思想の再評価が進みつつあるという見方も存在しています。

所感

『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』を読んで、戦後の日本における左派勢力の形成過程や、その背景にある思想を深く理解することができました。特に、共産党と社会党の違いや対立、またその後の新左翼の誕生には非常に興味深く感じました。

本書が示すように、左翼思想は時代の変化と共に進化してきました。戦後の困難な時期において、共産党や社会党は多くの人々に希望を与えましたが、その後、路線の違いから分裂を余儀なくされ、新左翼の登場に繋がったことに驚きました。現在の日本において、格差や貧困が再び問題視されている中で、左翼思想がどのように再評価されていくのかについても興味深いです。

左翼思想の歴史を知ることの重要性を再認識しました。過去の教訓から学び、現代に生きる我々がどのように社会問題に向き合い、解決していくべきかを考えるきっかけとなりました。特に、格差の拡大や貧困問題が再び問題視される中で、左派思想がどのように再評価されるのかに注目したいと思います。

まとめ

『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』は、戦後日本の左翼勢力がどのように形成され、発展してきたのかを丁寧に追いかけています。共産党と社会党の対立や、スターリン批判がもたらした亀裂、新左翼の誕生とその後の影響が詳細に語られています。戦後日本の政治と社会における左翼思想の変遷を知ることは、現代社会における格差問題や社会的な課題に取り組むためにも非常に重要です。

本書を通じて、左翼思想の成り立ちとその後の変遷を学ぶことができ、現代社会における問題解決に向けた貴重な視点を得ることができました。今後、左派の思想が再評価される場面で、本書が示すような視点を意識していきたいと感じました。左派思想の歴史を学ぶことで、現代社会の問題にどのように立ち向かうべきかを考える上で非常に有益だと考えています。

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