著者・出版社情報
雑誌名: ホンダ・日産の命運(週刊ダイヤモンド 2025年1/25号
出版社: ダイヤモンド社
概要
『ホンダ・日産の命運』は、2025年1月25日号の週刊ダイヤモンドの特集として、国際ニュースや自動車業界の動向を中心に詳説した記事をまとめたものです。直近の大きな話題としては、米国スチール産業を巡る買収問題、NVIDIAを筆頭とした半導体・生成AI分野の動向、そしてホンダと日産という2大日本メーカーの行方が取り上げられています。
米国政治や半導体技術の地殻変動が自動車産業の再編にまで波及しており、大型買収やアライアンス再編といった激動が予想される今後。特にホンダと日産は電動化と世界市場の変化への対応を迫られているだけでなく、それぞれの企業文化や戦略がまったく違う方向へ向かいつつあると、記事は分析しています。
主要ニュースと背景
米国スチール産業問題、NVIDIAの生成AIブーム、ホンダ・日産の経営動向という3つの視点がメインに語られています。
① USスチールの買収禁止命令と米国政治
バイデン大統領とトランプ前大統領は政策的に大きく対立する面が多い一方で、米国企業の買収阻止という点においては珍しく意見が一致した、と本号では指摘しています。
日鉄がUSスチールを買収する可能性が浮上していたが、米国政府が国家安全保障上の懸念を挙げて買収を禁止する動きを見せた。その背後には米国国内の雇用保護や国内生産維持を重視する圧力があり、バイデン政権は労働者寄りの立場をとることで国民の支持を得ようとする意図がうかがえるとのこと。
この動向は、米国がグローバル化から一部後退している象徴の一つであり、かつての「自由貿易推進」の立場からは明確に変化してきているように見えます。
② NVIDIAの勢いと生成AI関連の半導体事情
生成AIのブームにより、NVIDIAのGPUが世界的に需要拡大。その生産を支えるのはTSMCの先端プロセス(2nm級と報道される最新プロセス)であり、同時にインテルやサムスン電子などのかつての大手プレイヤーが苦戦を強いられている、と記事は伝えます。
NVIDIAの牙城を崩すためにAMDやGoogle(独自開発TPU)などが奮闘しているが、GPUの圧倒的シェアが本格的に揺らぐかどうかは不透明。米国当局が中国向けの半導体輸出制限を強化する動きもあり、中国の半導体開発力と数のパワーで対抗できるかが焦点になるとしています。
③ ホンダと日産の現状と今後
ホンダ
電動化の先行投資が大きく膨らみ、利益率が圧迫されている一方、北米SUVやバイク事業など手堅い収益源を持つ。海外メーカーとの提携やソフトウェア開発にも積極的。記事では買収も含めた大規模な再編を狙う可能性が示唆されている。
日産
ルノーとのアライアンス再編で落ち着きつつあるものの、中国市場での苦戦が業績に響いている。新型EV「アリア」などで電動車を強化するも、競合が多く思うように売上を伸ばせていない。
記事によると、日産が再編や他企業との提携を検討する流れの中で、ホンダが買収の可能性を探っているとの観測が浮上。両社の企業文化の違いを考えると実現には障害が多いが、自動車業界の大変革期に向けた動きとしては注目ポイントであるという。
所感
自動車産業の大再編を象徴するニュース
現在、自動車業界はEVシフトやソフトウェア化、自動運転、グローバルなサプライチェーンの再構築など、歴史的な変革期に突入しています。そこへきてホンダと日産が明暗分かれたり、大きな買収話が浮上したりするのは、業界再編の本格化を如実に物語るようにも見えます。
ホンダは二輪車の強みやエンジンの高い技術力を武器にしながら、電動化とバッテリー開発、さらには航空分野などへも拡大を狙う多角的戦略が特徴的。日産はEVの先駆者としてリーフを成功させたが、ここ数年は新規モデル開発の遅れや市場戦略の迷走が見られ、中国市場でも後手に回っている印象が否めない。
記事で囁かれる「ホンダが日産を買収する」シナリオは、かつての日本の自動車業界では考えづらいものでしたが、国際競争の熾烈化や金融市場の動き次第では十分あり得る局面に来ているという。これがもし現実になれば、日本の企業文化や人的資源の統合は大きな摩擦も予想されますが、同時に巨大なエンジニアリング力を発揮する可能性も秘めている、と興味をそそる内容です。
米国の“保護主義”と世界のパワーバランス
一方で、日鉄によるUSスチール買収を米国が禁止するかもしれないという話は、米国内の労働者保護や国内生産維持を最優先する動きが強まっていることを示すと同時に、バイデン政権とトランプの政策が一致するという興味深い状況を生んでいます。
これは“経済のグローバル化”から“自国優先”へ回帰しつつある流れを象徴しているのかもしれません。自動車業界にも影響が及ぶのは必至で、将来ホンダや日産が米国生産を強化するか、新工場をどこに建てるかなど、経営戦略にも大きな影響を及ぼすでしょう。
半導体と生成AIが自動車を左右する時代
NVIDIAの成長が止まらず、TSMCの先端プロセスが半導体業界を席巻している現状は、EVや自動運転、さらに車載ソフトウェアに多大な影響を与えます。自動車が“走るコンピュータ”化する中で、高性能チップやAI技術が車載システムの根幹を担うため、半導体メーカーの動向はそのまま自動車メーカーの優劣を左右し得るわけです。
中国がNVIDIA GPUの使用を禁止されても独自チップで巻き返す可能性があるのか、アメリカがさらに輸出規制を強化するのか、こうした地政学的要因が自動車の将来にも繋がっているのは一大トレンドと言えるでしょう。
まとめ
『ホンダ・日産の命運』と題された週刊ダイヤモンドの特集は、アメリカの買収禁止や半導体大手NVIDIAの話題を含めて、世界の産業構造・地政学・技術革新が自動車業界へどう波及するかを多角的に分析しています。
特にホンダと日産は、電動化・自動運転・グローバル戦略といった大転換期における各社の戦略に加え、マクロ的な経済・政治の影響をもろに受けて変化が避けられません。記事によれば、ホンダは二輪車と北米市場での安定収益を背景に、電動化への投資を拡大し日産との再編や買収まで模索する可能性が指摘される。一方の日産は、EV先駆者としての面影を取り戻すために新型モデルを投入するも、中国市場やブランドイメージの回復に苦戦している状況。
このように世界規模の経済情勢(米国保護主義の強まり、NVIDIA中心の半導体業界)、日本国内の自動車業界再編、さらには各社の経営方針が絡み合う中で、2025年以降の動向が大いに注目されます。電動化やソフトウェア化への対応をめぐり、両社が新たな提携や買収に踏み切るのか、それとも独自路線を貫くのか——そしてそれが日本の自動車産業全体にどのような影響を与えるのか、今後の展開から目が離せません。
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