著者・出版社情報
著者: ビル・パーキンス
出版社: ダイヤモンド社
概要
『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』は、金銭や資産を必要以上に貯め込むのではなく、生きている間にお金を戦略的に使い切ることで、人生の幸福度を最大化する方法を提案する一冊です。著者ビル・パーキンスはウォール街の投資家として成功を収めた人物ですが、この本では「いつ、何に、どれだけお金を使うか」を見直し、自らの経験と数多くの事例をもとに、その最適解を示しています。
従来の価値観では、老後の不安に備えて可能な限り貯金するのが美徳とされてきました。しかし、本書が提示するのは、「お金を持っていても体力が衰えた老後には有効活用できない」という事実。若いうちの体験こそ、一生の財産になるという考え方を軸に、お金の使い方をドラスティックに変えていこうと説くのです。人間はどんなに資産を築いても、やがては死というゴールが待っています。そのときに貯金を何十億円残しても、悲しいかな享受できるのは自分ではなく相続人だけ。そうした固定観念を大きく塗り替え、「死ぬ瞬間には銀行口座の残高をゼロにする」くらいが最適だという大胆なアイデアを展開します。
活用法
本書は従来の「節約して資産を残す」発想を一変させる、非常に挑戦的なメッセージを含んでいます。そこで、特に「活用法」の項目はかなり多めに取り上げ、読者が実生活でどんな一歩を踏み出せるか具体的なヒントを探ってみましょう。
1. 人生の「デッドライン」を設定し、若い時にこそ体験を優先する
1) 体力に応じた体験リストを作る
若い頃しか楽しめないスポーツやアドベンチャーは、体力がある20~30代に集中して行うのがベストです。たとえばスキューバダイビングや海外バックパッカー旅行など。年齢を重ねると同じ活動にも多くの制約が出ます。
2) 時間とお金を「今」投入する意義
将来のために貯蓄するのは大事ですが、本書では「その将来に本当に体力が残っているのか」を問います。病気や怪我、気力の衰えなどで、計画していたイベントが実行不能になるケースは多いはず。デッドラインを設け、「~歳までに必ずこの体験をする」と逆算することで、お金を使う「時期」を最適化できます。
2. お金を単なる「モノ」購入ではなく「経験」購入に集中させる
1) 物欲よりも“思い出欲”を優先
心理学の研究でも、「物を買うよりも経験にお金を使った方が幸福度が高まる」と知られています。例えば高価な車を買うよりも、一生忘れられないような海外ボランティアや家族旅行に投資する方が、長期的な満足を得られます。
2) 家族や友人との共同体験
経験は一人だけで完結するより、誰かと共有すると「思い出」としてより深い意味を持ちます。家族旅行やグループでのアクティビティは、人生の大切な絆づくりにも繋がります。本書が提唱する「生前贈与」も、子供や親にお金をあげるだけでなく、一緒に何か体験をする形で使うと、さらに幸福度を高めると語られています。
3. お金の「ピーク」をいつにするか考える
1) 60代や70代で膨大な資産を持つ意味は?
本書では「歳を取ってからでは、お金の活用度が低い」と指摘します。実際、旅行に行きたくても長時間フライトが困難になったり、新しい冒険をする体力が足りなくなるなどの現実問題が生じるわけです。
2) ピーク時を40~50代に置く戦略
著者は「40~50代あたりで資産が最も高まるように人生設計し、そこから徐々に減らしていく方が賢明」と述べます。その時期ならまだ体力もあるし、子供がいれば学費などへの支出も視野に入り、お金を「今」使うことでリターンが最大化しやすいのです。
4. 生前贈与と「自分が生きているうちに子供を助ける」考え方
1) 遺産を残すのは自分が死んでから…はもったいない
多くの人が「子供に遺産を残す」と考えますが、そのお金が子供にとって最も必要な時期はいつでしょう? 例えば、30代で家を買う、起業するといった場面で資金が必要なのに、親が80歳や90歳で亡くなるまで待っていたら“遅すぎる”かもしれません。
2) どのタイミングでどれだけ支援するか
本書では、「子供が最も必要とする時期に資金を渡す」ことで、親子ともにメリットを享受できると説きます。生前贈与は税制面でのメリットもありますし、何より「あなたが直接相手の喜ぶ姿を見る」ことができるのが大きなポイントです。
5. 仕事やキャリアとのバランス
1) 働きすぎが招く後悔
「死ぬ瞬間の5つの後悔」にもあるように、多くの人が「もっと仕事以外のことに時間とエネルギーを使えばよかった」と感じると言われます。本書も同様に、「稼ぐことに邁進するあまり、楽しむ機会を先送りしてはいけない」と警鐘を鳴らします。
2) スキルや人脈への投資の重要性
とはいえ、まったく働かずに過ごすわけにもいきません。若い頃は学習やスキル開発に投資し、稼ぐ力を高めることで中年期以降にお金と時間の余裕を得やすくなります。「稼ぐ→使う→さらに稼ぐ」と循環させる発想が大事で、いかに自分の価値を上げつつ、お金を幸福に変換するかがカギなのです。
所感
「老後に備える」「資産を残す」という日本の伝統的な価値観とは対極にあるこの本の主張は、一見すると刺激が強いかもしれません。しかし、本書を読むと分かるのは、単に“浪費”を奨励しているわけではないということ。むしろ、長期的な視点に立って「お金を使うベストな時期」「使い方」を綿密に計画し、人生全体での幸福度を高めるための戦略的な思考が必要という点です。
定年まで真面目に働いて、そこから裕福に暮らそう…という従来のモデルは、平均寿命が伸び、病気や介護といった要素も加わる現代には合わなくなっているかもしれません。“いつかやろう”と思っていた趣味や世界一周の夢が、身体や家族の都合で実現不能になってしまう例は少なくありません。本書はそんな「先送り」に警鐘を鳴らし、今アクションを起こす大切さを説いてくれるのです。
読んでいると、自分の残り時間を意識せざるを得ませんが、逆に「だからこそ、今を楽しまなきゃ!」という前向きなメッセージが心に響きます。家族や友人と、一緒に何を経験するか話し合うきっかけにもなるでしょう。
まとめ
- 「老後のための貯金」ではなく、「死ぬ瞬間には銀行口座をゼロにする」ほどお金を使い切ろうという挑発的なコンセプト
- お金は体験に投資し、人生の満足度を高めるツールとして活用。物より経験にお金を使う方が幸福度が高い
- 「いつ」何をやるかをデッドラインを決めて考える。体力や健康、家族構成を踏まえ、若い時ほど経験価値は大きい
- 子供への遺産も、生前贈与で若いうちに支援し、あなたが直接その喜ぶ姿を見る方が双方にメリットがある
- 仕事やキャリアはゼロではなく、稼ぐ力を養いつつ、適切な時期にお金を使う戦略を練ることが重要
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