WEIRD(ウィアード)「現代人」の奇妙な心理 上:経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

BOOK

WEIRD(ウィアード)「現代人」の奇妙な心理 上:経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

著者:ジョセフ・ヘンリック
出版社:白揚社

西洋文化普及の理由を探る本。

西洋の、教育を受けた、産業化された、裕福な、民主的な人々。その頭文字を取ったのが「WEIRD」。特異な思考形態を持ちながらも、なぜこれほどまでに繁栄したのかを探る本。本書の主な内容は①特性、②制度、③心理です。

特性

「WEIRD」な人々は、個人主義自己中心的自制的非同調的分析的な思考を持つ。大切な親友や自集団よりも、同じ会社や宗教、団体などの共同コミュニティーに属する人々を重視する傾向がある。また、科学的かつ明確な問題解決手法を用いる傾向がある。これらの文化が普及したのは、累積的文化進化の観点から説明できるのではないだろうか。生物の遺伝子情報と同じように、時の流れとともにより優れた文化的情報が継承されていく。複数の文化的衝突の中で、淘汰されずに残ったのが「WEIRD」だったのだろう。

制度

ではなぜ、このような繁栄ができたのだろうか。その理由の一つとして、婚姻制度が挙げられる。「WEIRD」な人々が信仰する宗教においては、親族婚が禁止され、遺伝的に遠い存在との交流が強制された。それにより遺伝的にも文化的にも多様性が生まれ、変化に強い人材が生まれることとなったのだろう。ダーウィンの進化論によれば、「最も強いものが生き残るのではなく、最も変化に敏感なものが生き残る」と言われている。文化的交流は、人類間の競争において非常に有利であったのだろう。

また、教育制度も重要な要素です。西洋では、教育を通じて個々の能力を引き出し、社会全体の発展を促進する仕組みが整えられています。この教育制度の普及により、知識と技術の蓄積が加速し、経済的な繁栄を支えています。さらに、科学技術の発展も「WEIRD」な文化の特徴です。科学的思考や実験的アプローチを重視することで、問題解決の精度が向上し、持続可能な発展が可能となりました。

心理

2つ目の理由としては、宗教の心理的な面がある。「WEIRD」な人々が信仰する宗教によっては、死後の世界として「天国」と「地獄」の両面が定義されていた。生前の行いによって死後の運命が変わる。この宗教観により、人々は親族のような近い人間関係以外に対しても道徳的な行いをするようになった。その結果、他人数の集団としての結束力が高まり、生存能力が強まったのではないだろうか。また、宗教が提供する倫理観や規範は、社会全体の安定と秩序を維持するための基盤となりました。

所感

個体としては必ずしも強くない人類がここまで繁栄し、その中でも特異な人種が世界をリードしようとしている現状を、本書は鋭く描き出しています。私たちが無意識に抱いているバイアスに気づくとともに、人が人として正しくあるためのヒントを与えてくれる一冊です。

特に、「WEIRD」な文化がどのように形成され、なぜこれほどまでに強固なものとなったのかを探る過程は非常に興味深いです。婚姻制度や宗教の影響など、文化的要因がいかに人間の行動や思考に影響を与えているかを理解することができます。本書を通じて、私たちが普段何気なく受け入れている価値観や行動の背景には、歴史的・文化的な要因が深く関わっていることを再認識しました。

また、現代社会における多様性や異文化理解の重要性を改めて感じました。これからの自分自身の行動や考え方を見直す良いきっかけとなりました。「WEIRD」な価値観がなぜこれほどまでに影響力を持っているのかを理解することは、グローバルな視点で物事を考える上で非常に重要です。

下巻も楽しみにしつつ、この知識を日常生活や仕事に生かしていきたいと思います。


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