リデザイン・ワーク 新しい働き方
著者:リンダ・グラットン
出版社:東洋経済新報社
現在の働き方を見直す本
コロナを経てリモートワークが普及し、私たちの働き方は大きく変化しました。そうした状況の変化を踏まえて、私たちの働き方を大きく変革する4段階のプロセスを語るのが本書です。主な内容は①理解、②構想、③検証、④創造です。
理解する
まず、私たちは暗黙知と明示的な知識について理解しなければなりません。暗黙知とは、各地が持つ文章化することが難しい、微妙なニュアンスを持つ知識のことです。それに対して、明示的な知識は文章に起こすことが可能であり、他人に説明するのも容易です。一般的な知識と言うと、明示的な知識の方を思い浮かべますが、仕事においては暗黙知の方が重要となります。暗黙知は、それぞれの現場に合うようにチューニングされており、ネットや書籍では得られない貴重な情報源です。
そういった暗黙知を共有するためには、人的なネットワークが重要です。しかし、リモートワークが普及した現代においては、情報共有を密に行う機会は減少しています。対面でのコミュニケーションを対応するか、リモートでのコミュニケーション手段を工夫するなど、何かしらの対策が必要です。
構想する
では、一体どのように対策すれば良いのでしょうか。2つ目の構想するでは、その働き方について言及しています。人は他者と協力し合って成長してきた生き物です。他人とのコミュニケーションがなければ、仕事においても成功することができません。しかし、一定時間の集中時間も必要です。研究によると、コミュニケーションを遮断する集中時間と、一気に集まって思考を拡散させるコミュニケーション時間を一定の割合で持ったコミュニティが、最も高い成果を上げることができました。その割合はコミュニティや状況により異なるでしょう。
在宅勤務と在社では、それぞれにメリット・デメリットがあります。普段のコミュニケーションでは、チャットなどの非同期型のコミュニケーションを多用し、それ以外のアイディアが必要な段階や業務の方向性を整える段階では、対面でのコミュニケーションを活用しましょう。
検証する
3つ目の検証するについて。リモートワークの普及以外にも、環境の変化は大きく進んでいます。近年ではAIの台頭により、人が手動で行っていた業務の多くが自動化されつつあります。職を失う人がいる一方で、新たな職を得てより生産性の高い成果を上げることができる人も誕生するでしょう。そのためには、マルチステージの人生を受け入れなければなりません。テクノロジーの進歩は速くなり、学生時代に学んだ知識や経験は陳腐化してしまいます。一度学んで人生を終えるのではなく、人生の各ステージで学び、仕事に生かし、新たな学びを得るというサイクルを回す必要があります。世界はどのように変化するのか予測し、定期的に新たな学びを得る習慣をつけましょう。
創造する
最後の創造するについて。人間は個人では些細なことしかできませんが、集団で団結すると大きな成果を上げることができます。優れたマネージャーはその相乗効果を発揮できる人材です。優れたマネージャーは広い視野で、長期的に物事を考え、チームメンバー各人の長所を生かそうとします。各メンバーに共感しながら、それぞれの思いや環境を汲み取り、適材適所で活かしていくことが重要となるでしょう。
所感
コロナにより環境は私たちが予想もつかない方向に転換していきました。今後もそのような予測不能な事態が数々訪れるでしょう。約100年ある長い人生、これまで数多くの生物がそうしてきたように、環境に適応できる強い人材となりたいと思います。
リモートワークの普及は働き方を大きく変えましたが、それに適応するためには、新しいスキルや知識の習得が不可欠です。特に暗黙知の共有や、適切なコミュニケーション手段の選択は重要です。さらに、AIの進化や技術革新に対応するためには、常に学び続ける姿勢が必要です。
本書は、新しい働き方を模索するすべての人にとって、非常に参考になる一冊です。私たちがこれからの時代を生き抜くためのヒントが詰まっています。今後も変化し続ける環境に対応し、自分自身を成長させるための道しるべとして、この本を活用していきたいと思います。