WEIRD「現代人」の奇妙な心理 下:経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

BOOK

WEIRD「現代人」の奇妙な心理 下:経済的繁栄、民主制、個人主義の起源

著者:ジョセフ・ヘンリック
出版社:白揚社

先進的で奇妙な人類を語る本。WEIRD(Western, Educated, Industrialized, Rich, and Democratic)「西洋的、教育を受けた、工業化された、裕福で、民主的」という特徴を持つ人々を指すアクロニム。世界的に見れば少数であるにもかかわらず、多くの学術研究ではWEIRDを対象として行われています。であればそもそもの、WEIRDないだろうか。そんなWEIRDの特徴を語った本書の主な内容は①婚姻生活の変化、②市場メンタリティー、③法、科学、宗教です。

婚姻生活の変化

人間は、元来一夫多妻性の生き物です。男性は生物学的に複数のパートナーを持ち、多くの子孫を残そうとする本能があります。しかしそれは、他の男性を蹴落とす行為でもあり、不必要な争いを招く可能性があります。実際に一夫一妻制の国において、婚姻関係を持つ男性はテストステロン値が低下し、未婚もしくは離婚後の男性は、テストステロン値が高い状態です。これは、一夫多妻性の国において、複数のパートナーを持っている男性も同様であり、テストステロン値が高い傾向にあります。一夫一妻制の婚姻は、男性のテストステロン値を低下させ、協力を促す作用があるのです。

市場メンタリティー

人々は時間を意識し、成果ではなく労働時間により賃金を得るようになりました。そして給料は定期的に、一般的には月1度支払われるようになりました。元来、時間という概念が存在しなかった人間の脳に時計が普及し、現在や近い未来しか意識できなかった人類は、遠い未来を想像できるようになります。これにより、遠い未来の報酬のためなら、手近に得られる報酬を我慢する傾向が強くなります。人々は長期的な計画をもとに、行動できるようになったのです。

法、科学、宗教

これら3つの要素は密接に関連し合っています。例えばカトリックでは、想像上であれ姦淫が禁じられています。しかし男性的な本能で、一度はそのような想像をすることはあります。それを宗教的に救済することで、多くの男性は勤勉に働くようになるとのデータがあります。法における規制も、それらの傾向を助長するのでしょう。このように宗教や法は、人類全体としての生産性、それに並ぶ繁栄を加速させる助けとなったのです。

所感

ここ数十年しか生きていないがために、当たり前に感じてきた文化や風習が多くあります。しかしそれらは、WEIRDな私たちだから当たり前に思い込んできたものです。人類全体で見れば、私たちは異質な存在であることがわかります。本能と文化の差異を感じさせてくれるのが本書です。人間が今までどう生きてきたかを知ることで、自分が残りの人生を生きるヒントとしたいと思います。


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