著者:デービッド・アトキンソン
出版社:東洋経済新報社
生産性の低さを分析した本
OECDが発表した2021年の平均賃金では、日本は加盟国38カ国中24位であった。その値は、アメリカに1.82倍、ドイツの1.38倍の差がついており、韓国にも抜かれている。このような原因は能力不足ではなく、生産性の低下に起因している。本書では、その生産性の低下要因と対策について述べている。そんな本書の主な内容は①生産性の低下要因、②戦略、③戦術。
① 生産性の低下要因
まずは生産性が低下している原因について。その要因としては労働参加率の向上が挙げられる。日本全体において労働参加率が向上し、高齢者や若年層など低賃金とされる層の社会進出により、平均賃金が下げられた。また、それらにより小規模の企業が多数発生。企業においては、ネットワーク効果の活用から、企業の大きさと生産性が相加の関係である。すなわち、小企業の割合が増えるほど生産性は低下するのである。
② 戦略
それでは、生産性や給料を上げるためには、どのような戦略を取れば良いのだろうか。最も重要なのは、自分を競争環境に置くこと。ネットオークションでは、購入サイドのライバルが増えるほど価格は釣り上がっていく。それと同様に労働市場においても、会社が増えるほど自分の給料は上がっていく。海外企業、転職、起業などを選択肢に、雇い主にとっての競合を増やしながら、給料交渉を行うのが、給料アップへの有効な手段だろう。
③ 戦術
さらにその詳細として、転職をする際は、どのような企業を選べば良いのだろうか。その戦術として基準となるのが以下の内容。
- 生産性の高い業界に属していること
- 規模が大きいこと
- ダイナミズムも有していること
- 労働分配率
自分自身の給料を上るためには、規模が大きい上昇気流に乗ることが必要。低迷する業界に身を置いては、そもそもの給料アップが難しいだろう。かつ人材においても、技術においても、新陳代謝の盛んな企業の方が、業界の流れを追いやすくなる。上記の観点を意識しよう。
最後に
人口減少の現代日本において、自ら生産性や給料アップのための工夫は必須です。ただ運命に身を任せるのではなく、自分から変化を起こせる、そんな人生を送りたいと思います。本書を読んで改めて感じたことは、自己研鑽と柔軟な戦略の重要性です。経済環境や業界の動向を常に意識し、自分自身をアップデートし続けることが、長期的な成功につながるでしょう。
特に印象に残ったのは、日本の労働市場における硬直性です。多くの人が安定を求めて一つの会社に長く勤める傾向がありますが、それが必ずしも最善の選択とは限らないということです。リスクを取って新しい環境に飛び込むことで、新たなチャンスが開けることも多いと感じました。海外での経験や新しいスキルの習得が、自分の市場価値を大きく高める可能性を持っているのです。
また、働き方改革や女性の社会進出が叫ばれる中で、実際の労働環境がどれほど改善されているかについても考えさせられました。企業文化の変革は一朝一夕には成し得ませんが、一人一人が意識を変えることで、大きな波を起こすことができると信じています。特に、若い世代が積極的に声を上げ、行動を起こすことが求められているのではないでしょうか。
このように、本書は具体的なデータや事例を交えながら、現代日本の生産性向上と賃金アップの方法を探る一冊です。自分自身のキャリアを見つめ直し、未来のために今何をすべきかを考えるきっかけとなるでしょう。経済のグローバル化が進む中で、国内だけでなく国際的な視点を持つことがますます重要になります。新しい挑戦に対する恐怖心を乗り越え、自らの可能性を信じて前進することが、豊かな未来を築く鍵となるでしょう。これからも、自分の可能性を広げるために学び続け、成長し続けることを忘れずにいきたいと思います。