出版社:毎日新聞出版
① セブン&アイの買収提案
セブン&アイHDが、カナダの大手コンビニチェーン「アリマンタシォン・クシュタール」から買収提案を受けました。クシュタールは、サークルKなどのチェーンを次々と買収し、企業価値8兆円以上の規模にまで成長した企業で、セブン&アイの5兆6000億円を上回る時価総額を持っています。
買収提案のニュースが報じられた後、セブン&アイの株価は22%急騰し、時価総額は1兆円増加。この提案はまだ初期段階にあり、最終的な可否は社外取締役を中心に検討されることになっています。海外出身のプロ経営者や投資家も役員会に参加しており、株主の利益を守るためのガバナンス構造が整備されています。従来の日本企業とは異なり、名ばかりの社外取締役ではなく、グローバル基準に沿った経営が特徴です。外資からの買収提案に対しても、株主利益を重視した判断が求められています。
日本企業が抱える買収リスク
多くの日本企業は、円安と株価低迷によって「お買い得価格」となり、外資からの買収対象となるリスクが高まっています。セブン&アイのように、成長の余地があるものの現在の経営体制で十分に発展しきれていない企業は、特に狙われやすいです。日本企業はここ数年で欧米のスタイルに倣い、社外取締役中心のガバナンス構造にシフトしましたが、これが逆に買収リスクを高める要因となっています。
外資が狙う日本の優良企業
記事では、外資が注目する日本の企業が複数存在することが示されています。これらの企業は、特定の市場で強いブランド力や成長のポテンシャルを持っている一方、業績の低迷や円安によって株価が割安になっている場合が多く、外資から見て魅力的な投資対象となり得ます。
外資が買収を狙う背景
外資企業が日本の優良企業に注目する背景には、以下の要因が挙げられています。
グローバルな拡大戦略
クシュタールのように、外資系企業はグローバル市場での成長を買収を通じて加速させる傾向があり、日本企業もその対象になり得ます。
円安と株価低迷
円安により、日本企業の株価が割安で、外資から見て買収コストが下がっていることが、買収を後押ししています。
プロ経営者の増加
日本企業の社外取締役がプロ経営者や投資家中心になり、株主利益を重視した意思決定を行うようになったため、買収提案が以前よりも通りやすくなっています。
② 大阪万博の課題
2025年の大阪万博は、夢洲という地盤の弱い埋立地で開催されます。建設問題や液状化問題、工事の納期など、様々な課題がある中、特に問題視されているのが災害時の避難経路です。地震発生時の津波の可能性を考慮すると、孤島である夢洲は緊急時の避難経路が極めて脆弱で、船舶での移動は困難です。地下鉄道も遮断される可能性が高く、災害時の対策が求められています。2025年が間近に迫る中、無事に開催できるかどうか、今後の対策が注目されています。
③ ドイツの自動車業界の動向
ドイツの自動車業界では、2029年までの安定した雇用が約束されていたものの、コロナ禍以降の営業利益率低下により、リストラの可能性が浮上しています。その背景には、格安電気自動車(EV)の開発の遅れがあります。特に中国市場での需要が高い格安EVの開発が進まず、販売台数の伸び悩みが経営を圧迫しています。経営陣はシェイプアップが必要と考える一方で、労働者側は断固としてリストラに反発しており、今後の業界の動向が注目されています。
所感
今回の特集で取り上げられているセブン&アイの買収提案や日本企業の買収リスクについて、非常に考えさせられる内容でした。外資企業が狙う日本の企業には、成長のポテンシャルがありながらも、経営の問題や円安により外資から見て「お得」となっている点が共通しています。これからの日本企業には、「守り」だけでなく「攻め」の姿勢も重要でしょう。
また、大阪万博の準備状況については、災害時の避難経路の脆弱性が大きな課題となっていることが示されていました。大規模なイベントの成功は、日本にとって重要な意味を持つため、今後の対策が必要不可欠と感じました。
そして、ドイツの自動車業界が抱える問題も他国の問題として見過ごすべきではなく、日本の自動車業界も学ぶべき点が多いと感じます。特に、技術の遅れが市場に与える影響や、労使のバランスなど、日本国内の業界にも通じる問題が浮き彫りになっています。
まとめ
日本企業の買収リスクの増加、災害に対する大阪万博の懸念、ドイツの自動車業界の課題、これらは現代のグローバル経済の中で避けて通れない課題を象徴しています。日本企業が世界で生き残り、さらなる成長を遂げるためには、外資からの買収に対する防衛だけでなく、自ら積極的に成長戦略を展開していくことが求められています。
また、大阪万博の成功は日本の未来にとって重要な意味を持ちます。そのためには、インフラの整備とともに、安全対策の強化が欠かせません。現状の課題を迅速に解決し、万博を通じて日本の魅力を世界に発信することが必要です。
ドイツの自動車業界のように、技術の遅れが市場のシェアを失わせるリスクを理解し、日本も技術革新を急ぐべきです。それぞれの事例から多くを学び、日本の未来を明るくするためのヒントを得られた一冊でした。
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