著者・出版社情報
著者:植松 努
出版社:サンクチュアリ出版
概要
子どもの頃、多くの人は大きな夢をいくつも抱いていたのではないでしょうか。例えば「宇宙飛行士になりたい」「新しい発明をしてみたい」「人を喜ばせる面白い仕事をしたい」など。しかし、大人になるにつれ、自分の才能や環境、周囲の反応などを考慮して、「こんなこと自分には無理だ」と諦めてしまう人が少なくありません。
本書『好奇心を“天職”に変える空想教室』は、そんな「どうせ無理」という声を跳ね除けて、夢中になれるものを仕事にまで育てる秘訣を説いた一冊です。著者の植松 努さんは北海道の町工場から宇宙ロケットを飛ばすという非常にユニークな経歴の持ち主。無謀とも思えるチャレンジを実現できたのは、「子どものような好奇心を大人になっても持ち続けてきたからにほかならない」と語ります。
夢が大きければ大きいほど、周囲からは「無理だ」「そんなの役に立たない」といった否定の声を浴びやすいかもしれません。しかし、実際にやってみたら意外とできることもありますし、一歩踏み出してみると新しい道が開けることも多いもの。本書は、そうした“挑戦の可能性”を再発見させてくれる、心を奮い立たせるエピソードで溢れています。大人になって夢を見ることが恥ずかしいと感じる人や、子どもにどうやって夢を応援してあげたらいいかわからない親御さんにも、ぜひ読んで欲しい内容です。
活用法
好奇心を「遊び」として始め、継続する
大きな夢や目標を考えると、つい「どう実現すればいいのか」「費用はどれくらいかかるのか」といった現実的な要素に気を取られて、最初の一歩が踏み出せなくなることがあります。けれども植松さんのメッセージは明快で、「まずは遊びとしてでも、小さく始めてみる」ことが大切なのだと言います。
例えばロケット開発にしても、「いきなり巨大ロケットを本格的に作ろう」とするのではなく、紙ロケットや小型エンジンの模型などの小さな実験から始める。楽しみながら続けているうちに、仲間ができたり、知識や技術が増えていき、いつしか大きな挑戦が射程圏内に入ってくる。これはどんな分野でも共通する流れでしょう。
要するに、「本格的にやらなければ意味がない」と気合を入れすぎると疲れてしまったり、最初の失敗で挫折してしまうリスクが高まる。だからこそ、“最初は趣味や遊び感覚でいいから、少しずつ好奇心を膨らませていく”という姿勢を持つのが、長く続ける秘訣というわけです。
「どうせ無理」と言われても、無理の根拠を問いかける
夢やアイデアを語ったとき、「そんなの現実的じゃない」「できるわけない」と返される経験をしたことがある人は多いかもしれません。でも本書は、そうした否定の声に対して「なぜ無理なのか?」「何か具体的に難点があるのか?」と問い返してみるよう勧めます。実際は根拠がないまま「無理だ」と言っているだけで、やったことがない人ほど簡単に否定する――そんなケースが多いからです。
あるいは、もし本当に課題があるなら、その理由を聞けば改善策を考えられるかもしれません。植松さん自身も、「ロケット開発なんて大企業や政府機関じゃないと不可能」と幾度となく言われましたが、その度に「どこが無理なのか」を探りながら、少しずつ対策を積み上げました。その結果、小さな町工場からNASAやJAXAにも負けない技術を培うまでに至ったというのだから驚きです。
夢を持つことは決して空想ではなく、「どうすればできるのか」という具体的な問いに繋げる力を持っています。だから「どうせ無理」と言われる場面ほど、本当の課題を見極めるチャンスと捉えるのが大切なのです。
否定的な言葉を聞き流せる強さを養う
否定的な声に対しては、「確かにそうかも」と耳を傾けて改良点を学ぶ姿勢が必要な一方、最初から何も根拠なく「無理」と言い切るだけの批判にまで律義に耳を貸していると、気持ちが萎えてしまうもの。本書では、根拠のない「どうせ無理」発言はスルーすることの意義も説かれています。
・周囲が「あなたには無理だよ」と言うのは、その人自身の過去の失敗や狭い常識に基づくことが多い。
・あるいは競争相手を減らしたい、ライバルを出したくない心理から否定的な態度を取るケースもある。
・本当にやりたいなら、否定的な言葉に動揺せずに続けた方が結果として早く成果が出る。
それを踏まえると、否定的発言をすべて真に受ける必要はなく、「自分の夢を応援してくれる人はいるだろうか?」と視点を変えてみるのも重要かもしれません。もちろん、客観的にリスクを指摘してくれる建設的なアドバイスは大切ですが、そうでない「ただの否定」には引きずられない強さを持つことが、夢を実現する人に必須なのです。
失敗を恐れず、無駄を楽しむスタンスで学びを深める
夢や好奇心に突き動かされて行動を起こすと、必ずと言っていいほど「失敗」や「うまくいかなかった経験」に直面します。そこで多くの人は「やはりダメだった」と諦めがちですが、本書のメッセージは「失敗こそが成功への大きな学習材料になる」というものです。
例えば植松さんのロケットづくりでは、ちょっとした部品の不具合や想定外の風向きなど、繰り返し発生する課題に頭を悩ませたことで技術が洗練されていきました。失敗を重ねるごとに、「なぜ失敗したか」を分析し、次の試作でそれを修正することで、結果的には大きな進歩が実現します。これは何か新しいプロジェクトを始める人にとっても大きな示唆で、「最初から完璧を求めず、トライ&エラーを繰り返す方がいい」という考え方をバックアップしてくれます。
あえて言えば、“無駄に思える時間”こそ、本当に新しい発想や技術を生み出す肥料になる可能性が高いということ。自分が楽しんで続ける中で、自分独自の知識やノウハウが蓄積され、それが後から「こんな形で役立つなんて思わなかった」と驚く瞬間をもたらす。そうした循環が、やがて好奇心を天職に変えるプロセスだと、本書からは感じられます。
周囲との協力、巻き込み力を大切にする
「一人で全部やる」のは限界があります。特に大きな夢ほど、多様な人の力を借りる必要が出てくるでしょう。本書でも、植松さんが自分だけの力でロケットを打ち上げたわけではなく、社員や家族、地元の仲間、そして様々な技術者や研究者とのコラボレーションがあってこそ実現したことが描かれています。
だからこそ、「どうせ無理」に負けずに好奇心を貫き通すためには、自分の夢やアイデアを他人に話してみる姿勢も欠かせません。賛同してくれる人を見つけたり、技術や知識をシェアしてもらったりと、話すことで応援や協力の輪が広がることがあるのです。「こんなバカなことを言ったら笑われるかも」と心配する気持ちも分かりますが、それを乗り越えて発信すれば、思いがけない協力者に出会うきっかけが生まれる――これが、著者の強い信念でもあるようです。
好きなことを見つけるヒント:試してみないと分からない
本書は、すでに夢を持っている人だけでなく、「何がやりたいのか分からない」と悩む人にも指針を与えてくれます。というのも、植松さんが強調しているのは、「夢や天職は、いきなり自覚できるものじゃなく、いろいろやってみる中で絞り込まれていく」こと。
そのため、
- 「やったことがないこと」にこそチャレンジしてみる
- 少しでも面白そうなら手を出してみる
- 合わなければやめてもいいから、無駄を恐れずに試す
といったマインドが大切だと説かれます。すると、不思議と「意外と楽しい」「もっと続けたい」と思えるものが見つかることが多い。もし見つからなくても、次に行けばいいだけ。そうやって選択肢を広げていくほど、偶然や運命的な出会いが増え、少しずつ自分にフィットする方向性が見えてくる。
植松さん自身も、子どもの時から宇宙に興味があったとはいえ、最初から本気でロケットを作ると決めていたわけではなかったはず。少しずつ試しながら、「もっとやってみたい」と思う気持ちが強まっていったのではないでしょうか。
所感
大人になると、どうしても「効率よく」「失敗はなるべく避けて」「コスパを重視」という傾向が強まってしまいます。でも本書を読むと、「少しくらい無駄に見えることでも、好奇心があるなら試してみることが大切なんだ」と再認識できます。
植松さんが示す実例は非常に力強いものです。ロケット開発なんて、私たちから見れば超高難易度。しかし彼は、町工場という限られたリソースの中で、失敗を繰り返しながらも夢を実現。NASAやJAXAにも負けない技術を持つに至り、子どもたちにも夢を語り続ける存在になりました。「ロケットを飛ばす」という一見非現実的な行動が、結果的に周囲を巻き込み、新しい価値を生んでいるわけです。
また、「どうせ無理」という言葉がどれほど多くの人の可能性を潰しているかを具体的に聞くと、日常で耳にしがちなそのフレーズの破壊力に改めて気づかされます。一方で、それを気にせず自分の道を突き進んだ人だけが、意外と道を切り開いていく――そこには人生の大きな真実があるように思えます。
まとめ
『好奇心を“天職”に変える空想教室』は、「どうせ無理」という言葉に負けず、子どものような好奇心を持ち続けることで、仕事を単なる生計手段ではなく本当の天職にまで昇華させる秘訣を語る一冊です。著者の植松 努さん自身が、町工場から宇宙への夢を実際に叶えたストーリーは、まさに“不可能を可能にする”強力な実例。
特に印象的なのは、次のようなポイントです:
- 「どうせ無理」という言葉を安易に受け止めない
根拠のない否定に押し流されるより、なぜ無理なのかを問い、解決策を探す。 - 失敗を恐れず、小さく行動を始める
いきなり完璧を目指さず、最初は模型や実験レベルでやってみるなど、遊び感覚で挑戦する。 - やりたい理由をはっきりさせておく
誰から否定されても、自分がそれを好きな理由や、やり続けたい本当の理由が分かっていればブレにくい。 - 好奇心の延長線が「天職」になる
得意や好きなことを仕事に結びつけるには、自分の行動を継続し、必要な知識や仲間を見つけることが重要。
そして、この本が本当に伝えたいのは「人間にはまだまだ可能性がある」という根本的なメッセージではないかと思います。
確かに社会の常識や大人の固定観念は、時に私たちを守ってくれる反面、同時に大きなチャレンジを阻む壁にもなります。それを超えるには勇気がいるし、必ずしも成功が約束されているわけでもありません。けれど、「やらないで後悔するより、やって学んだほうが得るものが多い」という人生観は、読むほどに大きな共感と活力をもたらすはずです。
もし「こんなことやってみたいけど、どうせ無理かな」と思っている人がいるなら、本書を手に取ってみてください。植松さんの語り口は親しみやすく、押しつけがましさがないため、「何かワクワクするものを試してみようかな」と素直に感じられるはず。好きなことを仕事に変え、周囲にも幸せや刺激を与えるなんて理想的ですが、この本はそれをただの理想で終わらせない、具体的な行動のヒントや勇気を届けてくれます。
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