著者:デービッド・アトキンソン
出版社:東洋経済新報社
適正な価値を生み出すための本
失われた20年が、失われた30年になり、経済が停滞し続ける日本。最近ではGDPがドイツに抜かれ、世界4位となりました。バブル崩壊前の日本の勢いは失われ、日本人の給料は低いままです。そんな現状がなぜ発生してしまったのかを語るのが本書の内容です。本書の主な内容は、①給料の低さ、②良品廉価、③イノベーションに焦点を当てています。
① 日本人の給料の停滞
まず日本人の給料が停滞したままである理由を探っていきます。それは、日本人が低い給料に甘んじているからです。海外の先進国では転職が当たり前で、給料に不満があれば他の企業に移ります。しかし、日本では終身雇用制度が根強く残っており、不満を抱えても転職に踏み切ることが難しい環境です。結果として、企業は安い給料で社員を長く雇い続けることが可能であり、給料が上がりにくい状況が続いています。
② 良品廉価とガラパゴス化
日本企業は良質な商品を低価格で提供する文化があり、これが「良品廉価」という考え方につながっています。特に、自動車業界の軽自動車は国内市場では非常に人気ですが、海外市場ではあまり注目されていません。このようなガラパゴス化が進行することで、企業の国際競争力が弱まり、結果的に社員の給料も上がりにくくなっているのです。
③ イノベーションの欠如
かつて日本は、ウォークマンや液晶テレビなどで世界をリードしていましたが、近年ではITやソフトウェア分野での革新力を失いつつあります。日本の企業文化は、リスクを取ることに対して慎重であり、それが革新の遅れにつながっています。イノベーションを促進するためには、個人も企業も新しい挑戦を恐れず、革新的なビジネスモデルや技術を生み出すことが求められています。
所感
この本を通して、日本の経済停滞の背後にある構造的な問題が浮き彫りになりました。特に終身雇用制度やガラパゴス化した製品が、日本の給料の低さに大きく影響していることは驚きでした。また、良品廉価という文化は日本人の誇りでもありますが、それが国際的には競争力を失っているという現実にも気づかされました。日本が再び世界の舞台でリードするためには、企業が革新的な製品を適正価格で提供することが重要です。加えて、イノベーションを起こすための企業風土の改革も不可欠であり、そのためには労働者一人ひとりが自己の成長を求め、企業の成長を促進する必要があるでしょう。
まとめ
本書は、日本の経済成長に必要な改革について具体的な提案をしており、日本の給料の停滞がどのようにして発生し、今後どのように改善できるかを理解する上で非常に有益な内容です。著者のアトキンソン氏は、日本企業の現状に対して、単なる問題提起にとどまらず、個人や企業が取るべき具体的な行動指針を示しています。特に、給料を上げるためには、個人が転職を恐れず、新しい挑戦に取り組む姿勢が求められています。日本の経済成長と個々人の豊かさのために、今後も企業と労働者が協力して変革を進めていく必要があると強く感じました。
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