傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考【禅が教える心の安定】

BOOK

著者: 枡野 俊明
出版社: 文響社

内なる声とどう向き合うか

不安や心配を生む心の声

本書で扱われるのは、「内なる声」といかに向き合うか、そしてその声によって生じる不安や心配への対処法です。日常の中で、私たちは無意識に様々な不安や心配を抱えています。例えば、人間関係の中で「他人からどう見られているか?」と過剰に気にしたり、失敗への恐怖から「自分はこの場で正しく振る舞えるか?」と自問自答することがあります。これらの声が頭の中で繰り返されると、日々の生活に大きな負荷をもたらします。著者である枡野俊明は、こうした声がもたらす負のスパイラルに対し、禅の教えを通じて「一歩引いて冷静に見つめる」姿勢を提案しています。

自分の不安を俯瞰して見る技法

禅の視点では、自分の不安や心配をそのまま放置するのではなく、少し距離を置いて観察することが推奨されます。例えば、他者と比較して落ち込むことがある場合、それをそのまま自己否定につなげるのではなく、「なぜ自分がこの不安を抱くのか」「その不安は本当に意味があるのか」といった問いを立てて、自分の中の感情を観察することが大切です。人は誰でも不安を感じますが、それが実際に起こるかどうかは別問題であるため、冷静に距離を置くことで、心の安定を図れるのです。

禅が教える図太さと柔軟さ

他人との比較から離れるために

職場や日常生活で、優れた同僚や友人と比べて自己評価が低くなってしまうことは多くの人が経験することでしょう。しかし、枡野氏は、このような比較の思考に囚われるのではなく、他人は他人、自分は自分と割り切ることの重要性を説いています。比較をしている時点で、私たちは自分の価値や能力を歪んで見てしまうのです。もし他人と自分が違うと気づければ、そこから独自の価値を見出し、他人にない自分の良さに気づけるかもしれません。

「ありのままを見る」禅的な視点

枡野氏は、禅の中で重視される「ありのままに見る」視点を用いて、自己肯定感を持つ方法を提示します。具体的には、周囲の期待や世間体にとらわれるのではなく、「自分が何を大切にしたいのか」「自分にとって本当に重要な価値観は何か」といった内面的な探求を大切にすることを強調しています。この視点に立てば、他人の評価や状況に左右されることなく、自分の中の安定感を築くことが可能になります。

所感

本書を通じて、「内なる声」との向き合い方について深く考えさせられました。
禅の教えに基づく「図太くなる」ことは、単に周りを無視して強がることではなく、自分の心を俯瞰し、冷静に受け止める力を養うことだと気づかされました。私たちは、他人との比較や、未来の不安、過去の失敗などに囚われやすく、それが心の負担となりやすいですが、本書が示す禅的な視点はそのような迷いを軽減してくれます。

特に印象に残ったのは、「心配のほとんどは実際には起こらない」という言葉です。日々感じる不安や恐怖が、自分の過去や未来に影響されることがあると認識するだけでも、気持ちが少し楽になった気がします。仏教の修行を通じて得られる静けさは、現代社会で忙しく生きる私たちにとって非常に貴重なものであり、自分にとって本当に大切なものを見極める助けになるでしょう。

また、枡野氏が提唱する「他人と比較しない姿勢」についても深く共感しました。他者と自分は異なり、自分だけが持つ価値に気づくことができれば、他人の評価に振り回されることも少なくなるでしょう。自己肯定感や自己価値を再確認することで、より穏やかに生きるヒントを得ることができました。

まとめ

本書『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』は、現代社会において重要なメンタルヘルスの一助となる内容です。
枡野俊明氏は、禅の教えを通じて、私たちが抱える不安や心配との冷静な向き合い方を提案し、心の平穏を築く方法を伝授しています。多くの人が日常的に感じる他人との比較、不安、自己否定といった問題に対し、冷静に距離を取る「禅の視点」を活用することの重要性を説いており、非常に参考になる内容です。

本書を通じて、自分の中にある否定的な声無意識の心配が、実際には大きな影響を与えるものではなく、冷静に俯瞰するだけで軽減されることが学べました。また、自己否定感を減らし、他人との違いを受け入れることで、より自分らしく生きる方法を知ることができます。禅の教えを実践することで、私たちは他人に振り回されない穏やかな生き方を手に入れられるでしょう。

本書は、内なる心との向き合い方を再確認し、日々の忙しさの中で迷いやすい心を静かに保つための一助として多くの気づきをもたらしてくれる一冊です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました