週刊エコノミスト 2024年4/30・5/7合併号【特集:崖っぷち中国】

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週刊エコノミスト 2024年4/30・5/7合併号【特集:崖っぷち中国】

出版社:毎日新聞出版

中国の危機を語る回

中国市場は、習近平政権が発足して以来、経済成長の勢いが鈍化している。2012年に正式に発足した同政権であるが、当時約10%だった経済成長率は2023年には5.2%まで落ち込んでいる。その原因は短期的にはコロナ禍、長期的には産業構造の転換遅れにあると考えられる。

経済成長の停滞

習政権の経済成長率の低下にはいくつかの要因が挙げられる。まず、コロナ禍の影響が大きい。世界的なパンデミックにより、経済活動が制限され、多くの国で経済が停滞した。同様に、中国でも経済成長にブレーキがかかった。また、産業構造の転換遅れが長期的な課題となっている。製造業中心の経済から、サービス業やハイテク産業へのシフトが遅れており、経済の多様化が進んでいない。この結果、成長の原動力となるべき新しい産業の育成が不十分であり、既存産業の衰退を補うことができていない。

隠れ債務と不動産の不調

中国の経済問題には、隠れ債務や不動産市場の不調も含まれている。習政権は経済刺激策として隠れ債務を増やし続けてきた。公式発表では中国の隠れ債務は35兆元とされているが、IMF(国際通貨基金)の推定では、2022年時点で55兆元に達するとされる。この膨大な債務は経済の不安定要素となっている。隠れ債務の増加は、地方政府や国有企業が多額の借入を行いながらも、透明性の欠如により実態が把握しづらいことが背景にある。これにより、金融システム全体にリスクが拡大し、経済の脆弱性が高まっている。

さらに、不動産市場も大きな問題となっている。2020年8月に不動産デベロッパーに対する融資規制が敷かれ、多数のデベロッパーが経営難に陥った。昨年には業界大手の債務不履行が問題となり、不動産市場の健全性が疑問視されている。中国の不動産市場は長らく経済成長の主要な牽引役であったが、過剰供給や価格の高騰が続き、バブルの懸念が指摘されている。これにより、不動産価格の下落や投資の停滞が経済全体に悪影響を及ぼしている。

スマホ市場の動向

一方で、スマホ市場においては中国が有利な状況にある。Apple製品の販売が24%減少している一方で、中国企業ファーウェイは販売を伸ばしている。画像処理半導体やGPU大手のエヌビディアは、ファーウェイを競合相手として初めて認識している。ファーウェイの好調がどこまで続くのか、注目されるところである。ファーウェイは5G技術や自動運転技術など、新たな技術分野での展開を進めており、これが中国国内外での市場シェア拡大に寄与している。しかし、米中間の貿易摩擦や技術規制の影響もあり、今後の動向には不確定要素が多い。

所感

中国経済の未来は不透明であり、多くの課題が山積している。習政権はこれらの課題にどのように対応するかが今後の鍵となるだろう。特に、隠れ債務や不動産市場の問題は深刻であり、これらを解決しなければ経済の安定は望めない。隠れ債務の増加は、金融システム全体にリスクをもたらし、経済の脆弱性を高めているため、透明性の向上とともに、財政の健全化が必要である。また、不動産市場の健全化には、過剰供給の是正とともに、価格安定策が求められる。

一方で、技術分野では依然として競争力を保っているため、この強みを生かしつつ、経済全体のバランスを取る必要がある。ファーウェイをはじめとする技術企業の成長は、中国経済の新たな希望となっている。しかし、技術分野での競争力を維持するためには、国際的な協力と国内のイノベーション促進が不可欠である。

中国の動向は世界経済にも大きな影響を与えるため、今後も注視していきたい。特に、米中間の緊張やグローバルサプライチェーンの変化が中国経済に与える影響は大きく、これらの要素も考慮しながら、中国経済の未来を見据える必要がある。


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