著者:鎌田雄一郎
出版社:岩波書店
利得行列とパレート最適
最初に登場するのが利得行列です。これは、2人以上のプレイヤーが選択する戦略と、その結果生じる利益を一覧化する方法です。利得行列を使うことで、視覚的に状況を把握でき、プレイヤーがどのように行動するかを予測しやすくなります。また、パレート最適やナッシュ均衡など、複数のプレイヤーが最適な利益を得るための状態も明確になります。
ビジネスにおいても、例えば、競合他社との価格競争や、契約交渉における有利な戦略を考える際に、この利得行列は非常に有用です。全体最適を目指すか、それとも自己利益を追求するか、視覚化することで、自社の行動方針を合理的に決定できるようになります。
ゲームの木と戦略的選択肢
ゲームの木は、プレイヤーの選択肢を時系列で整理するツールです。チェスや将棋のようなターン制のゲームで利用され、各手順ごとにどのような行動が可能かを表します。ビジネス戦略の立案や、新規市場への参入計画でも、このゲームの木を利用することで、複数のシナリオを立て、将来的な選択肢を見通せます。
例えば、新たなビジネスモデルを導入する際、既存の競合がどう反応するか、その反応に対して自社はどう対策を講じるか、といった具体的なシミュレーションが可能になります。このように、ゲームの木は戦略的な意思決定を支える重要なツールです。
完全情報ゲームと不完全情報ゲーム
本書では、完全情報ゲームと不完全情報ゲームの違いについても説明されています。将棋や囲碁のように、全ての情報が開示されているゲームは完全情報ゲームです。対して、ポーカーのように相手のカードが見えない、あるいはビジネスにおいて顧客の本音が分からない状況は不完全情報ゲームと言えます。
不完全情報ゲームでは、相手の行動を予測し、リスクを取ることが必要です。これもまた、日常やビジネスにおける多くの意思決定に応用可能です。ビジネス交渉や契約時の駆け引きでは、全ての情報が揃わないことが一般的です。その中で、相手の意図や行動を推測しながら、自らの利益を最大化する方法を探ることは、ゲーム理論に基づく戦略的思考の本質と言えます。
所感
ゲーム理論は、単に「遊び」や「ゲーム」を超え、人間関係やビジネスの戦略を見直す視点を提供してくれます。人間はつねに選択肢に迫られる生き物であり、どの選択が最も合理的で最良の結果をもたらすかを予測する能力が求められます。そのため、ゲーム理論の考え方は、複雑な状況をシンプルに整理するのに非常に役立ちます。
まとめ
本書『ゲーム理論入門の入門』は、ビジネスや日常生活における意思決定を、理論的かつ実践的な視点でサポートしてくれます。利得行列やゲームの木といったツールを使えば、感情に流されずに冷静に状況を分析できるようになります。また、完全情報・不完全情報の違いを学ぶことで、見えない要素をどう推測し、行動に反映させるかのヒントが得られます。
ゲーム理論は、日常的な意思決定からビジネス戦略に至るまで、あらゆる場面で活用できる実用的な学問です。これを通して、複雑な問題をシンプルに整理し、自らの意思決定能力を高めることで、人生や仕事においてさらなる成功を掴む一助となるでしょう。
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