PRE-SUASION :影響力と説得のための革命的瞬間【影響力を高めるための下準備】
著者:ロバート・チャルディーニ
出版社:誠信書房
影響力の土台を作るための本
本書の著者ロバート・チャルディーニは、前作『影響力の武器』で以下の6つの法則を紹介しました。
- 返報性
- 好意
- 権威
- 社会的証明
- 希少性
- 一貫性
これらを最大限に活用するには、下準備が重要です。人間はその場その場で判断しているわけではなく、時系列的な影響を受けています。事前に何らかの情報を得ていれば、その後の判断にも影響を与えるのです。本書では、事前準備をうまく活用することで、会話や説得において円滑な流れを演出できる方法を解説しています。主な内容は、①下準備、②注意力、③好意です。
① 下準備
商談や企業のCMにおいて、事前に類似した情報や好意的な情報に触れていると、その商品やサービスを選びやすくなります。人間は変化を嫌う生き物ですが、その変化が徐々に訪れれば自然と受け入れてしまいます。下準備は、そうした作用をうまく利用するものです。新しい情報を急に押し出すのではなく、じわじわと脳内にインプットしていくことが重要です。例えば、新製品を宣伝する際には、事前に関連する話題を提供し、顧客が興味を持ちやすい状態を作り出します。これにより、製品の受け入れがスムーズになります。
② 注意力
下準備をうまく作用させるためには、相手の注意力を引きつける必要があります。「相手が関心を持つもの、目立つもの、危険を感じるもの」などを活用するのが良いでしょう。人間は長期間、エネルギーを節約しながら生存に有利なように進化してきました。特に思考においては、生存に関係のないことにエネルギーを割くのは無駄な行為であり避けてきました。恐怖心は生存にダイレクトに影響するため、自然と注意力を引きつけます。他にも、相手が自然と関心を持つテーマを話題にすれば、話を聞いてもらいやすくなります。
③ 好意
人間は長年、コミュニティーを形成しながら生存競争を勝ち抜いてきました。自分に対して敵意を持つ相手と関係を結ぶのは危険であり、自分を好意的に扱う者とそうでない者を瞬時に判断する能力があります。影響力を持つためには、まず自分が信頼に足る人物であることを示すことが必要です。自分が相手にとって役立つ技術を持っていることをアピールし、笑顔を示し、危険な存在ではないことを伝えましょう。
所感
信頼を構築するのは難しいものですが、一度構築すれば、それ以降のコミュニケーションコストを削減できます。前作の『影響力の武器』と同様に、本書のテクニックも悪用が可能であり、悪用すれば自分自身の自尊心も傷つき、長期的な人間関係も損なわれます。したがって、これらのテクニックを活用する際には、お互いがwin-winの関係を築くことを目指すのが良いでしょう。他人のためになることを考えながら、本書のテクニックを活用し、人間関係をより良いものにしていきたいと思います。
最後に
本書を通じて、影響力を持つための基本的な原則を学びましたが、最も重要なのはこれらの原則をどのように活用するかということです。知識を得るだけでは不十分で、それを実際の人間関係にどう応用するかが鍵となります。信頼を築くためには時間と努力が必要ですが、一度構築された信頼は強固で長続きします。この本の教えを実践し、他者との関係をより良いものにしていくことが、最終的には自分自身の成長にも繋がるでしょう。他者との信頼関係を築きながら、自分の影響力を高め、より良いコミュニケーションを実現していきたいと思います。
コメント